ハイエンドは、確かに“本物”だった
System 5.1を中心に組んだシステムは、確かに本物だった。
あの視聴会で感じた“存在感”が、家に来た。
真ん中にボーカルが立つ。
音が鳴るのではなく、空間が変わる。
こうなると厄介で、もう元の音には戻れない。
人間、贅沢に慣れるのが一番早い。
それでも当時の私は、まだどこかで思っていた。
「一生モノだ」
「これで終わる」
「もう買い替えない」
──そんなわけがない。
「あと少し」を埋めるために、入れ替えが始まる
ハイエンドは、手に入れた瞬間がゴールじゃない。
むしろスタートだ。
部屋が気になる。
ケーブルが気になる。
ラックが気になる。
電源が気になる。
セッティングが気になる。
そして一番怖いのが、“あと少し”という感覚。
あと少しで、視聴会のあの空気になる気がする。
あと少しで、あの声が戻る気がする。
あと少し、あと少し。
気がつけば、入れ替えと試聴と見積が日常になっていた。
(これ、完全に沼のテンプレだと思う)
そして、現実が来る
でも、現実は容赦がない。
音は逃げないが、支払いは逃げない。
趣味は楽しいが、生活は続く。
そして老後は、ちゃんと近づいてくる。
ある時点で、私ははっきり理解した。
「このまま“買う側”でいるのは無理だ」
資金事情、というやつだ。
派手な事件があったわけじゃない。
ただ、数字がそう言っていた。
長年SEをやっていたから分かる。
システムは、予算が尽きたら止まる。
止めるしかない時が、来た。
手放す、という作業
手放す作業は、買う時より静かで、面倒で、少し疲れる。
状態を整える。
付属品を確認する。
相場を見る。
売却ルートを検討する。
そして何より、気持ちを整理する。
「手放したら、もう戻れないかもしれない」
……いや、正確に言えば、
戻れるかもしれない。でも、戻らない。
私は一度、あの音に賭けた。
それは事実だし、後悔とも少し違う。
ただ、ここから先は別のゲームになる。
年金生活
制約が増える暮らし。
でも、工夫の余地が増える暮らし。
私は、そっちに舵を切ることにした。
退職金の向こう側で、私は“生活”をハックする
こうして私は、音の世界から現実に戻ってきた。
戻ってきたというより、現実側に最適化し直した。
派手に買えない。
だから試す。
無駄を減らす。
仕組みを作る。
失敗しても、次に活かす。
元SEの性分なのかもしれない。
次話:不用品売却のコツ(高く売る・安全に売る)


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